■下村湖人の「心窓をひらく」のなかにこんなほほえましい話があります。
進君という子が、ある日、お母さんにかんじょう書きを書いてみせました。
「かんじょう書き」 お母さんへ
1、市場にお使いに行きちん 10円
2、お母さんのあんまちん 10円
3、お庭のはきちん 10円
4、妹を教会につれて行きちん 10円
5、婦人会のときのおるすばんちん 10円
ごうけい 50円 進より
これを見たお母さんは、にこにこして、そうね、よくお手伝いをしてくれたわね。ありがとう!!と心からほめたそうです。
翌朝、食卓の進君が座るところに、次のようなお母さんからの書き付けがおいてありました。
「お母さんのかんじょう書き」 進君へ
1、高い熱が出てハシカにかかったときの看病代 ただ
2、学校の本代、ノート代、エンピツ代、みんなただ
3、まいにちのお弁当代 ただ
4、さむい日に着るオーバー代 ただ
5、進が生まれてから今日までのおせわ代 ただ
ごうけい ただ お母さんより
どうですか、うまいですね。智恵のあるお母さんですね。その後進君はかんじょう書きを出さなくなりました。