ぼんさんのひとりごと

bonsan no hitorigoto

ぼんさんのひとりごと

第53話 お墓掃除

■終戦後間もなくの昭和26年ごろ
わたしが小学校6年生のころ、父(住職)と村の70戸のお墓を年に4回掃除した記憶が甦ってきます。
お寺の農地10反が農地解放で小作の人に手放すことになり、お寺にお米が入ってこなくなりました。
子供5人はその日の食にも困ることになりました。
そこで父がとった、行動が檀家のお墓を掃除させてもらい一軒に一升のお米を頂くことにしたのです。
お盆前の暑い日に蔭のないお墓で日中草削りをした記憶は辛いものでした、しかし今思い浮かぶのは汗を一杯かいていた父の背中でした。

昼に帰ったらスイカを冷やしているからな。そんな言葉につられて、しぶしぶ手伝ったのを思い出しました
そのころは、今のように除草剤などない時代でした、スギナのような野草がはびこっていました。

今日境内の草を引きながら、父がお寺の大事に立ち向かった姿を思い浮かべて、暑いの、辛いの、しんどいのと言ってはおられません。

役場へ勤めたり、学校の先生をして家族を護り、お寺を護った住職は沢山いますが、先代住職は、僧侶の仕事以外はせずに耐え抜いたその姿勢に今の私の根性も養われたのです。